作詞のネタ帳

日常や社会の出来事に対して自分の心に引っかかったことを元に作詞していますが、この心の動きを公開し、また作詞のアイデアとして使う目的で始めました。書いてる歌詞の意味がバレルかも(笑)

踊るマハラジャ その10

きっと君は来ない…

 

  次の目的地タージマハルのあるアグラへの列車の出発は22時。観光を終えホテルのロビーで夜まで何をしようかと思案している今の時間は14時。ホテルの付近に観光名所はない。もとよりインド観光による疲労もピークに達していて、どこかに行きたいという気力もない。ホテルのロビーで時間を潰すことにした。それにしても長い時間。

フロントの若いお兄ちゃんが暇そうにしてる。時間帯的にもそうなんだろう。たわいもない会話をする。
「どれくらいここで働いてるの?」
「キョネンマデ ガクセイシテテ ココデハタラキハジメタノハ サイキンダヨ」
「へぇー、今いくつなの?」
「ジュウキュウ」
若い。見たからに若いとは感じてたが。年の割にしっかりと正装してキリッとしてる子。
「ニホンジンナンデショ?ボクノ ダイスキナ ドウガガアッテ、ニホンノ チイサナオンナノコガ オドッテルンダケド コレガカワイクテ オモシロインダ」
なんか自分の精神年齢に近い会話でホッとする。インドに来てからこういう会話に完全に飢えてた。
「知らない、どんなやつ?見せてよ」
お兄ちゃんが自分のスマホを出し、その動画を探している。ちなみにこのインド旅行は2年前の話だが、その時でもインドの若い子は普通にスマホ持ってた。さすがIT大国。
「コレコレ、ドウ?」
エッ…これ中国人だろ。小さな中国の女の子がキレッキレの踊りをしてる。
「この子中国人だよ」
「ソウナノォー」

「いつもはどんな音楽聴いてるの?」
「(ナントカ)ダヨ」
「(ナントカ)って誰?」
「エッ (ナントカ)シラナイノ?」
知るはずがない。そのミュージシャンの名前はさすがに忘れたが、話を聞いてるとインドで一番人気があるらしく、インド音楽ベースでダンス調の音楽とのこと。インド版エグザイル?w
「外国の音楽は聴かないの?」
「キカナイ、アナタハ ナニキクノ?」
洋楽聴かないなら、何知ってるんだろうか。
ビートルズ好きなんだけど、知ってる?」
「シラナイ」
若いししょうがないか。でもビートルズだぞ。しかもインドとも所縁もあるのに。
「インドの音楽しか聴かないんだね。」
「ソウダヨ インドノ オンガクハ サイコーダヨ」
この旅でインドの人は音楽と踊りが好きなことはすごく感じていた。そして何より自分たちの文化が大好きなことも。このお兄ちゃんからもインド愛をいっぱい感じた。

 

  しばらくしてフロントのお兄ちゃんは別の仕事でいなくなり、ひとりぼっち。暇なのでイヤホンしてスマホで動画を見てた。レニークラヴィッツのライブ。しばらくすると自分の背後に何か気配を感じる。後ろを振り向くとインド人のおっさんが3人、僕のスマホを覗き込んでる。ホテルの修繕をしてた人たちだ。知ってるの?と聞くと、知らないと言う。でも関心があるようだ。スマホからイヤホンを外し、スピーカーから音を出してあげる。彼らは体でリズム取りながら聴いてる。いいねぇなんて言いながら。音楽に国境はないなぁ。ただ彼らがずっと聴き入ってたのでそれに付き合ってたら体の姿勢的に少々疲れた…

  こんな感じで時間を潰しながら、やっと18時になった。ホテルのレストランが開く。メシでも食って時間を潰そうと中に入る。誰も客はいない。メニューを見ていると、インド料理が並ぶ。カレーしかないよなとページをめくるとチャイニーズという言葉に目がいく。マジー!疲れてたのと、この旅でカレーしか食べてなかったこともあり、インド旅行をしてるんだぞというポリシーも関係なく注文。しかしインドではほとんど外国料理屋を見かけなかった。都会ならマックもあるが(それでもカレーが絡む)、あの世界のどこででもよく見かける中華料理屋ですら、数が少ない。インド人は本当にカレー好き。中華食べて少し元気が出た。

 

  20時ごろ添乗員が迎えに来る。まだ出発には少し早いけど、夕食おごるから一緒に行かないかと誘いを受ける。メシ食ったばかりだと伝えたけど、まぁせっかくなんで少しだけならとOKした。添乗員、運転手、その連れの3人。みんな若い。そして彼らの行きつけの店に着く。もちろんカレー屋さんw

彼らは適当に注文し、その料理を少しもらうことにした。できる添乗員は僕のためにペットボトルの水を注文してくれた。店から出された水はやっぱり外国人は飲まない方がいいと。でも私、それまで結構店の水飲んでまして…

  インドのカレーは大まかに分けて、野菜カレーと肉カレーがある。宗教上の理由からだ。彼らは野菜カレーを食べてた。そして驚くことにスプーンを使ってカレーを食べてる。
「あれっ、スプーンで食べるの?」
「ウン、デモ オヤノマエデハ テデタベルケドネ ウルサインダヨ」
今時の若いモンってやつ。時代は変わる。日本人も随分変わってるし、面倒くさくない方向になるよね。
「メシはカレーしか食べないの?」
「ソウダヨ」
「中華とかは?」
「ハラガモタナイカラ スキジャナイ」
それにしても彼らは若いだけあってよく食べる。

 

  メシを食い終わり駅へと向かおうとすると、添乗員は今から別の仕事でデリーに向かうので、駅までは残りの2人が連れて行くと言う。だから1人増員してたんだ。しっかりしてるし、ちゃっかりもしてる。礼を言って添乗員と別れ、駅に向けて出発する。
車中の会話で彼らが学生であること、そして将来について迷っているものの、希望のある会話をしながら駅に着く。
列車の状況を見に行ってくれ、予想通り遅れていていつ出発なのかまだわからないとのこと。やっぱりかと思いつつ、車の中で待つこととなった。が、彼らはなぜか車のエンジンを切ってしまう。冷房の切られた車内は走行中と打って変わって猛烈に暑い。窓を開けたが大して変わらない。駐車場の他の車を見ても誰もエンジンをかけてない。これは駐車場ではエンジンをかけたまま待つのは禁止なのか?それともただ単にガソリンがもったいないからなのか。未だに謎…
  2時間くらい経ったろうか。彼らもウトウトしてる。コントじゃないんだからしっかり起きてろよ。これは情報仕入れとかないと列車に乗れないと思い、駅に確認をしにいくが、時刻表見てもさっぱり状況がわからない。あきらめて車内に戻った。そして彼らが完全に寝ないように物音をたてたり、車のドアを開け閉めしたりして対策をとった。
しばらくして寝てた彼が列車を確認をしに行く。やっと出発できると教えてくれる。
こうして待ちっぱなしの一日がやっと終わった。本当に疲れた…