作詞のネタ帳

日常や社会の出来事に対して自分の心に引っかかったことを元に作詞していますが、この心の動きを公開し、また作詞のアイデアとして使う目的で始めました。書いてる歌詞の意味がバレルかも(笑)

踊るマハラジャ その6

I'm going off the rails on a crazy train.
(俺は狂った列車のレールから降りるつもりだ by オジー オズボーン)

降りられない…

  デリーからガンジス川への移動は寝台列車。ホテルから駅まで送ってくれるのは、初日にガイドを断った添乗員。
  「デリーカンコウハ デキタノカ?」
  「いやぁ、大変だった。あんたの言う通りだったよ」
  「ダカラ イッタデショ。ムリダッテ」
  半分正解で、半分不正解な気持ちだけど、まぁ駅まで送ってもらうんで。

  駅に着いて、ひとつ心配になる。夕方出発して朝に着く長時間移動なのにメシはどうなるか?添乗員に聞く。
  「シャナイハンバイ アルケド オマエハ ナニカ カットイタホウガ イイカモ」
  店に案内してもらいサンドイッチみたいな食べ物をゲットして、ホームに向かう。
  ホームにはまだ列車は来てなくて、それまで添乗員とたわいもない会話で時間を潰す。その間に何度も物乞いの人がやってくる。添乗員は自然な感じで小銭を渡す。
  列車がホームにやって来た。いよいよ初列車だとテンションが上がる。でも自分の目の前に停車した瞬間不安になる。
  「あれっ、窓ガラスがない…」
  目の前に止まっている電車の窓は、ガラスはなく窓枠に二本棒が横に付いてる、漢字の「目」のような吹きっさらしの列車だ。
  「えっ、これなの?」
  自分はツアーを頼むときに、エアコン付きの列車だと確認している。なんでガラスがないの?これがインドのエアコン?はぁ?
  「アレ、オカシイナ。チョトミテクル」
  そして添乗員が戻ってくる。
  「ワルイ、ムコウダ」
  ビビらせるんじゃない…この車両は一般席のようだ。

  ホームを歩いてようやく窓ガラス付きの車両にたどり着く。予約制の等級の高い車両は入り口に紙の乗客リストが貼ってある。添乗員はリストから僕の名前を見つけ、ここだと中まで案内してくれてる。そして席を確認するとお別れをした。いいヤツだったので、ガイド断ったのはちょっと悪かったなぁと思いつつ、チップは弾んでおいた。

  僕の席は日本で事前に確認していた通り、3人がけシートが向かい合ってる6人席だ。当然僕の他はインド人。車両全体で見ても日本人は僕だけ。とりあえず同じ席の人にあいさつする。出発してしばらくすると車内販売が始まる。インドの皆さんは一斉に買い始める。興味津々で彼らが何を買ったのかをガン見する。アルミホイルのフタがついた弁当らしきものを二つ持っている。彼らはそのフタを取る。カレーとゴハン。弁当だけど汁物w

  みんな食事を済ませて、僕以外は一家団欒といった雰囲気。しかしそんな団欒の時間をぶち壊すノイズが僕らを襲う。通路を挟んだ反対側の席の二階で寝てる小太りのおっさんのイビキ。これが尋常でない。クレイジーなほどイビキがデカく、しかも呼吸したりしなかったりのやばいやつで、しまいには寝ゲロまでしてて、見てるこっちが痛々しくなってくる。自分はこんなこともあろうかと耳栓を持ってきてたが、それもほとんど役に立たず。隣のインド人とも
  「何じゃありゃ」
って笑いあった。まさにインド人もびっくりってやつ。早く降りたいと願った…

  こんな一夜を過ごし、列車内で朝を迎える。駅を乗り過ごすのが怖いのか早く目覚めた。海外の列車は日本のとは違い、走ったり止まったりノロノロだが、インドも例外なくノロノロ走ってる。車窓から見える風景は、もう日本ではお目にかかれない昔の農村の風景。線路沿いに並ぶ壊れかけの家。庭に畑があり、牛、鶏、犬が放し飼いされてる。住人は井戸から水を汲んで顔を洗ってる。ノロノロ運転なので、そんな人たちと目が合う。のどかだ。時間がゆっくり流れてる。今の日本で生活している自分が、このような生活はできないだろう。便利で清潔な生活、別に便利な生活が人生を幸せにしてくれるわけではない。でもこういう生活を目にすると、ものに溢れているよりも、ものがない方が希望があるような感じもする。子供の頃は欲しいものだらけだったけどなんか希望があった。でも欲しかったものを手に入れると、もうその幸せは逃げていく。今となっちゃ欲しいものすらあまりない状況。幸せとは相対的なもの。

  いよいよガンジス川のある地ヴァラナシの駅に着く。ここで降りるのかどうか不安に思ってると、次の地の添乗員が列車に入ってきて降りろと言う。なかなか良くできてる。こうして今回の旅のメイン、ヴァラナシの地に降り立った。